結婚を前提にお付き合いしていた彼氏が実は既婚者だったと知れば、ショックは計り知れないでしょう。
悲しみに打ちひしがれても時間が経てば、なんとかして相手に仕返ししたいと思うのが人の気持ちかと思います。
既婚者であることを隠して交際していた場合、交際相手に法的に請求できるものがあります。
交際相手に騙した償いをさせたいとお考えの方は参考にしてみてください。
貞操権とは
貞操権とは性的関係を持つ相手を自分で選ぶ権利を指します。
誰と性的関係を持つかは自分自身に決める権利があり、他人が教養や干渉をすることはできません。
身体を許す相手を自分で決める権利は誰しもが法律で保障されているのです。
貞操権の侵害とは
貞操権の侵害とは、誰と性的関係を持つか自由に決める権利を侵害する行為のことを指します。
暴力や脅迫を手段として性的関係を持つことは、刑法上の強制性交等罪(きょうせいせいこうとうざい)などの犯罪に該当しますが、このような場合だけではなく騙されて気づかないうちに自己決定権を奪われてしまうことがあります。
無理やり性的関係を強要された場合でなくても、誰と性的関係を持つか自由な権利について騙されて正しい判断ができなかったことが権利侵害となるわけです。
つまり貞操権の侵害が成立する要件としては、騙されて自由な判断ができずに肉体関係を持ったことです。
貞操権を侵害されれば被害者は加害者に対して、その権利侵害によって負った精神的苦痛について損害賠償を請求することができます。
貞操権の侵害に該当する行為
貞操権の侵害が認められるのは次の3つに該当することが条件になります。
独身と嘘をついていた
相手が既婚者であることを隠し独身や未婚と偽っていた場合、女性は相手を独身と信じて交際していたことになります。
このような状態で性的関係を持った場合、貞操権を侵害した行為に該当します。
この女性は相手が独身だと信じていたからこそ性的関係を持ったのであり、既婚者だと知っていれば性的関係を持つことはなかったといえます。
女性は性的関係を持つにあたり、相手が既婚男性であるかどうかは非常に重要な事情となります。
これらの事情を隠す行為や偽る行為は、女性の自由な意思決定を阻害することを意味するため、貞操権の侵害にあたります。
また、独身と嘘をつかなくても既婚者であることをあえて言わず、ただ単に隠していたため、次のような誤解を生む行為も貞操権の侵害に該当します。
・結婚指輪を外していた
・単身赴任で独身者を装っていた
・独身者としてマッチングアプリで出会った
・独身者限定の婚活パーティで出会った
結婚前提の交際であった
結婚する気がないのにもかかわらず、交際相手の男性が結婚するふりをして性的関係を持った場合も貞操権の侵害に該当します。
女性からすれば、性的関係を持つかの判断は結婚する相手になるかという事情は非常に大きいからです。
結婚を前提に交際していたからこそ、性的関係を持ったという人も少なくないはずです。
婚約を約束している事情までは必要ありませんが、将来的に結婚をほのめかす発言をしており、それを信じたがために性的関係を持ったという状況であれば貞操権を侵害する行為になったといえます。
肉体関係があった
貞操権は肉体関係がなければ侵害されたとはみなされません。
貞操権は肉体関係を誰と持つのか自分の意思で決める権利なので、性行為のないプラトニックな関係だった場合は貞操権の侵害には該当せず、慰謝料の請求は難しいでしょう。
貞操権侵害で慰謝料が請求できないケース
不本意な相手と関係を持ったとしても、慰謝料が請求できないケースがあります。
慰謝料が請求できないケースとして、以下のような場合が挙げられます。
・既婚者だと知っていた
・プラトニックな関係だった
・結婚の話しをされたことがない
・独身と嘘をついていた証拠がない
・女性側から積極的にアプローチして交際した
貞操権の侵害を立証する証拠
貞操権の侵害を理由に慰謝料を請求するためには、それを裏付ける証拠を集める必要があります。
慰謝料を請求するには上記でも説明したように、独身と嘘をついていたこと、結婚前提の交際であったこと、肉体関係があったことが条件になります。
それぞれの事情を裏付けるには、以下のような証拠が挙げられます。
独身と嘘をついていたこと
独身と嘘をついていたことを証明する証拠は以下のようなものが挙げられます。
・独身と嘘をついているLINEなど
・1人暮らしがわかる賃貸契約書
・結婚指を外していることがわかる写真
・婚活サイトで独身と記載されているプロフィール
結婚前提の交際であったこと
結婚前提の交際であったことを証明する証拠は以下のようなものが挙げられます。
・婚約指輪
・両親との顔合わせ
・結婚式場の下見や予約
・結婚前提の交際がわかるLINEなど
肉体関係があったこと
肉体関係があったことを証明する証拠は以下のようなものが挙げられます。
・ホテルの領収書や宿泊履歴
・2人で旅行したときの写真
・妊娠や中絶したことがわかる診断書や領収書
・肉体関係であったことがわかるLINEやメール
貞操権の侵害の時効
貞操権の侵害で慰謝料を請求するのにも時効があります。
貞操権侵害の慰謝料請求は民法の不法行為に基づいて行われますので、騙されたことがわかってから3年経過すると時効が成立してしまいます。
被害者は精神的に大きなダメージを受け、すぐに慰謝料請求することができない場合や、時間が経ってから自分の置かれている状況でも慰謝料を請求できることを知ることもあります。
時効が迫っている場合は早急に訴訟の準備をしなければなりません。
時効は相手男性に内容証明郵便を送ることで6ヶ月間延長され、それまでに訴訟を提起すれば時効を止めることができます。
交際相手が独身か調べる
交際相手が既婚者と疑わしい場合、以下の方法で既婚者か調べることができます。
独身証明書の提示を求める
彼氏が既婚者と疑わしい場合、独身証明書を求めてみましょう。
独身証明書のほかに婚姻要件具備証明書(こんいんようけんぐびしょうめいしょ)があり、どちらとも現時点で独身であることを証明する書類になります。
本籍地がある市区町村役場や法務局などが発行している公的な証明書で、証明される本人若しくは代理人が請求することができます。
もし、彼氏が独身証明書の提示に素直に応じなければ既婚者と疑ってもいいかもしれません。
弁護士に依頼する
弁護士に依頼すれば職務上請求という方法で本人の戸籍を調べることができます。
住所がわからない場合は携帯番号や車のナンバーなどから弁護士照会という方法で、契約者情報や登録者情報を取得することが可能です。
ただし、弁護士の職務上請求や弁護士照会は受任している事件でないと請求することができず、調査を目的として利用することはできません。
また、マッチングアプリやSNSなどで知り合って交際している場合、嘘の住所を教えられていれば偽名の可能性もあります。
しかも、やり取りはすべてLINEで済ませていて電話番号も知らないという場合は弁護士の職務上請求や弁護士照会でも交際相手の身元を調べることは難しいでしょう。
探偵に依頼する
氏名・住所や電話番号などがわからなければ弁護士照会でも既婚者か調べることはできませんが、このような状況でも探偵であれば独自の方法やノウハウを用いて調査することができます。
彼氏の住所を知らない、偽名かもしれないと疑いを持った時点で探偵に依頼することをおすすめいたします。
まとめ
独身と信じて関係を持ったにもかかわらず騙されていたことがわかれば、その精神的苦痛は計り知れません。
また、騙されていた被害者なのに場合によっては交際相手の配偶者から不倫とみなされ、慰謝料を請求される恐れもあります。
そのため、交際相手に貞操権の侵害として慰謝料を請求するにも、身の潔白を示すにも故意や過失がないことを証明する証拠が必要です。
既婚者の彼氏に騙された代償を払わせたいとお考えの方はご相談ください。