なぜ私が謝ってしまうのか — 不倫被害者に起きやすい心理反応とは
- 2025年05月26日
- 2025年05月26日

「浮気したのは向こうなのに、なぜか謝っているのは私…」
そんな経験、ありませんか?
本来、傷つけられた側であるにも関わらず、いつの間にか「私が悪かったのかもしれない」「私のせいでこうなった」と感じてしまい、加害者に謝る。
これは、不倫やモラハラの被害者に非常に多く見られる心理的な反応です。今回は、なぜこのようなことが起きるのか、どうすれば自分を取り戻せるのかを、順を追って整理していきます。
なぜ被害者が謝ってしまうのか? 〜3つの背景〜
「私が謝れば丸く収まる」
「責められるのが怖くて、つい謝ってしまう」
「本当は悪くないとわかっていても、口から『ごめん』が出てしまう」
不倫という裏切りの被害者であるはずなのに、なぜこんなにも謝ってしまうのか。その背景には、心理的に見逃せない3つの要因があります。
① モラハラによる「認知の歪み」〜“自分の感覚”がわからなくなる〜
モラハラ加害者は、言葉巧みに相手をコントロールし、罪悪感を植え付けます。
たとえば:
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「お前が冷たかったから浮気した」
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「家庭を壊したのはお前だ」
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「誰が養ってやってると思ってる?」
このような発言を日常的に繰り返されると、相手の言葉が現実のように感じられてしまいます。これはいわゆる「ガスライティング(心理的操作)」と呼ばれるもので、被害者は自分の感覚や判断が信じられなくなっていきます。
結果として、「私が悪かったのかもしれない」と思い込まされ、謝罪という形で“納得”させられてしまうのです。
② 関係を壊したくないという「防衛本能」〜謝ることで場を鎮めたい〜
不倫が発覚しても、すぐに離婚を選べる人ばかりではありません。
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子どもがいる
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経済的に自立していない
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家族や世間体の問題がある
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長年の情がある
こういった状況では、「これ以上関係が悪化するのは避けたい」と思うのは自然な反応です。
そのため、被害者は無意識のうちに、**「謝ることで場をなだめよう」「これ以上揉めないようにしよう」**と行動してしまいます。
この防衛本能は、本来自分を守るためのものですが、結果として理不尽な相手に譲歩する形となり、さらに自己肯定感を損ねる悪循環に陥ります。
③ 自己肯定感の低下〜「どうせ私なんて…」が口ぐせになる〜
長期間にわたりモラハラを受けたり、冷遇され続けたりすると、被害者は次第に自己価値を見失っていきます。
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「私がダメだから、浮気されたんだ」
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「文句を言う資格なんてない」
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「我慢するのが“いい妻(夫)”なんだよね」
こういった考えが常態化していくと、不当な扱いに対しても抵抗する力を失っていきます。
謝罪は、相手との関係性を保つためではなく、**「自分の存在価値を保つための手段」**になってしまうことも。
つまり、「謝る」という行為が、自分の中の安心や居場所をつなぎとめるための唯一の方法になってしまっているのです。
自分を責めてしまう“思考パターン”に気づこう
不倫という裏切りを受けたにもかかわらず、なぜか「私にも落ち度があったのかも」と感じてしまう——。
それは単なる優しさでも謙虚さでもありません。
**心理的なショックや支配の影響によって作られてしまった「歪んだ思考パターン」**かもしれないのです。
よくある「自己責任化」の思考パターン
あなたの中に、次のような思いが浮かんだことはありませんか?
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「私がもっと気づいてあげていれば…」
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「浮気するくらい、私に魅力がなくなったのかもしれない」
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「仕事や家事で忙しくて、冷たくしてしまったかも」
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「責めるばかりじゃダメだ。私も変わらなきゃ…」
これらは一見、“反省”のように思えるかもしれませんが、実はその多くがモラハラやガスライティングによって刷り込まれた思考のクセである場合があります。
なぜ被害者は「自分が悪い」と思いたくなるのか?
浮気やモラハラという明らかな裏切りにあっても、なぜか「自分にも原因があったのかも」と考えてしまう。
それは単なる思い込みではなく、**心がダメージから自分を守ろうとする“無意識の防衛反応”**の一つです。
① 「自分のせい」と考えることで、現実をコントロールしようとする
人は、理不尽な出来事に直面すると、**「この状況をどうにか理解したい」「次は避けたい」**という欲求が生まれます。
たとえば、不倫されたという事実に対して、
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「私がもっと魅力的でいれば浮気されなかったかも」
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「あの時、ちゃんと話を聞いていれば違ったのかも」
と思うことで、「次は回避できる」と信じようとするのです。
つまり、「自分が悪かった=次は変えられる」と考えることで、無力感や絶望から逃れようとしているのです。
②「加害者を信じていた自分」を否定したくない
長年一緒に暮らしてきた相手や信じていたパートナーからの裏切りは、「自分の人生選択」を否定されるような苦しみを伴います。
でも、その苦しみはあまりにも大きくて受け止めきれない。だからこそ、
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「私が至らなかったから、あの人は苦しんでいた」
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「愛されていたけど、私の対応がまずかった」
と考えることで、「相手は元々悪い人だったわけではない」と思いたくなるのです。
これは、自分の過去やこれまでの愛情を守ろうとする、心の自然な働きでもあります。
③「相手を責める=自分を傷つける」恐れがある
加害者を責めることは、ときに「相手との決別」や「関係の終焉」を意味します。
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離婚になるかもしれない
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子どもの生活が変わるかもしれない
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経済的に困るかもしれない
このような現実的な不安がある中で、相手を責めること自体が自分を危険にさらすように感じられるのです。
だからこそ、相手を責める代わりに「私にも非があったのかも」と思うことで、関係の継続を正当化しようとすることがあります。
④ 過去の「刷り込み」が作用していることも
子どもの頃から「我慢しなさい」「あなたが悪かったんでしょ」と言われて育った人は、無意識のうちに「悪いのは自分」という反応パターンを持っていることがあります。
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家族の問題を抱えて育った
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両親が不仲だった
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感情を表すことを許されなかった
こうした環境では、**自分の感情よりも相手の顔色をうかがうことが“生き延びる術”**になっていた可能性があります。
そのため、大人になっても同じように「まず自分を責める」癖が残ってしまうのです。
「責任」と「原因」は、イコールではない
ここで大切な視点を一つ。
あなたの行動が“関係性に影響を与えた”ことがあったとしても、相手が不倫した“責任”は別問題です。
不満があったなら、それを話し合う選択肢もあったはず。
暴力や裏切りを選んだのは、相手の責任です。
誰かの行動に「きっかけ」があったとしても、「選んだのは誰か?」という視点を忘れないでください。
まずは「責めグセ」に気づくことが第一歩
思考のクセは、意識することで少しずつ変えていけます。
まずは、次のように言葉を置き換えてみてください。
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「私が悪いのかも」→「私は今、責任を背負いすぎていないだろうか?」
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「私も悪かったから…」→「私が本当に悪いと言える根拠はある?」
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「謝っておこう」→「その謝罪は、私の尊厳を守ることにつながる?」
ほんの少しずつで構いません。
自分を責める思考から、自分を守る視点に変えていきましょう。
自分を責めすぎていないかチェックリスト
「なぜか私ばかりが謝っている気がする」「責められていないのに、罪悪感がある」。そんな感覚があるときは、以下のチェックリストで自分の状態を見つめ直してみましょう。
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□ 相手の言動や不倫の原因を、すぐに「自分のせい」と考えてしまう
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□ 「どうせ私が悪い」と心の中で繰り返してしまう
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□ 相手に不満を言うと「私が間違ってるのかも」と不安になる
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□ 誰かに相談するよりも、「我慢した方が丸く収まる」と思っている
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□ 相手の機嫌を損ねないよう、自分の意見を抑えがち
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□ 謝ることで、その場を収めようとすることが多い
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□ 自分の感情や怒りを「大したことない」と見なしてしまう
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□ 傷つけられても、「相手にも事情がある」と擁護しようとしてしまう
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□ 理不尽な場面でも、「私さえ我慢すれば」と思ってしまう
✅ 3つ以上当てはまった方は要注意。あなたが感じている「申し訳なさ」は、本来あなたが抱え込むべきものではないかもしれません。
謝る前に一度立ち止まるための“内なる問いかけ”
「つい、すぐに『ごめん』と言ってしまう」
その瞬間、心のどこかで「本当は納得していないのに」と感じたことはありませんか?
謝るという行動の裏には、さまざまな感情や状況が絡み合っています。だからこそ、言葉を発する前に、自分自身の心と向き合う時間が必要です。
以下の「内なる問いかけ」は、自分の感情を整理し、相手に主導権を握られることなく、自分軸で選択するための大切なステップです。
問いかけ① 「私は、本当に悪いことをしたのだろうか?」
この質問は、「謝るべきこと」と「相手が不快になったこと」を切り分ける視点を与えてくれます。
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相手が怒っているからといって、あなたが悪いとは限りません
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感情的になっている相手が、冷静に物事を見られているとは限りません
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「気に入られないこと」と「間違ったこと」は別物です
「自分に非がある」と感じたとしても、それが事実に基づいたものかを、一度立ち止まって確認しましょう。
問いかけ② 「この謝罪は、関係を改善するため? それとも相手を黙らせるため?」
あなたの謝罪は、本当に建設的なものですか? それとも、自分を守る“防衛”として使っていませんか?
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相手をなだめるために謝っていないか?
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空気を壊したくない一心で、自分を抑えていないか?
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「面倒を避けるため」の謝罪を、繰り返していないか?
謝ることは悪ではありませんが、「謝ればすべてが丸く収まる」と思い込むのは危険です。時に、あなた自身の心を押し殺す行為になるからです。
問いかけ③ 「謝ることで、私は自分の心を守れているか?」
この問いはとても大切です。あなたの謝罪が、あなた自身の心にどんな影響を与えているのかを見つめてみてください。
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謝ったあと、どこかで「納得できない」「また我慢してしまった」と感じていないか?
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謝ったことで、自分の中の怒りや悲しみを無視してしまっていないか?
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何度も同じことで謝り続けて、自己否定の感情が強くなっていないか?
謝ることで「心が軽くなる」なら、その謝罪は正解です。
でも、謝るたびに「自分が消えていく」ように感じるなら、その謝罪はあなたを守っていない可能性があります。
ワンポイントアドバイス:「問いかける」ことは、逃げではなく“回復”の始まり
多くの不倫・モラハラ被害者が、反射的に謝ってしまうのは、「感情を感じる余裕が奪われている」からです。
だからこそ、自分の気持ちに丁寧に耳を傾ける時間がとても大切。
問いかけることは、迷いや混乱の中で立ち止まる“勇気ある行為”です。
そして、自分を守るための小さな境界線を築く第一歩でもあります。
自分を見つめなおすワーク:謝ってしまう「無意識の心の動き」に気づく
このワークは、「なぜ私は謝ってしまうのか?」という疑問に対し、自分の心の動き・過去の経験・思考のクセを掘り下げて見つめ直すものです。
誰かに答えを出してもらうのではなく、自分の中にある「気づき」を育てるプロセスとして取り組んでみてください。
ステップ1:直近の「謝ってしまった場面」を3つ書き出す
まず、最近自分が謝った場面を思い出してみましょう。大きな出来事だけでなく、「ごめんね」と何気なく言った小さなシーンも含めてOKです。
- パートナーが浮気を責められて怒ったとき、「私も至らないところがあった、ごめん」と言ってしまった
- ケンカ中に気まずくなり、「私が悪かった」と折れた
- 自分の意見を言ったら相手が不機嫌になり、「ごめん、気にしないで」と取り消した
ステップ2:「謝った理由」を書いてみる
上記のそれぞれについて、なぜ謝る選択をしたのかを掘り下げて書いてみましょう。
ここでは、「本当に悪いと思ったから」以外の動機も探るのがポイントです。
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相手の機嫌を損ねたくなかった
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その場の空気を早く収めたかった
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自分に自信がなかった
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相手の怒りが怖かった
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自分を否定されるのがつらかった
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相手に愛想を尽かされるのが不安だった
ステップ3:心の奥にある「本音」を探ってみる
「本当は、どうしたかったのか?」
「どんな感情を抱えていたのか?」
この問いはとても大事です。謝った裏側に隠していた“自分の気持ち”を、勇気をもって言葉にしてみましょう。
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本当は「あなたの浮気は私のせいじゃない」と言いたかった
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自分の怒りや傷つきがわかってほしかった
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寂しい気持ちを抱えていた
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「悪くない」と誰かに言ってほしかった
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一人になるのが怖くて、無理に合わせていた
感情に名前をつけてあげることで、自分を大切にする第一歩になります。
ステップ4:「謝らないという選択肢」があったとしたら?
同じ状況に戻ったとして、「もし謝らずにいられたとしたら、自分はどんな行動をとってみたかったか?」を考えてみましょう。
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ただ黙って気持ちを整理したかった
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距離を置いて冷静になりたかった
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「私はそうは思わない」と伝えてみたかった
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一人の時間を確保して、心を落ち着けたかった
「謝らない=悪」ではありません。謝らないという選択は、自分を尊重する行為でもあります。
あなたの気持ちを言葉にすることから始めよう
このワークの目的は、「謝ってしまう自分」を否定することではありません。
その背景にあるあなたの不安や悲しみ、混乱を丁寧に言葉にして、優しく受けとめることです。
今すぐにすべてが変わらなくても大丈夫。
あなたが「自分を理解しよう」としたその一歩が、これからの生き方を確実に支えてくれます。
「謝らない」ことは、悪ではない
「謝らないなんて冷たい」「反省していない」と思われるのでは、と不安になるかもしれません。でも本当は、理不尽なことに謝らないというのは、あなたの尊厳を守る行動です。
逆に、謝ってばかりいると、相手は「自分の行動は正しかった」と勘違いし、同じ過ちを繰り返す可能性もあります。
自分の中に「線」を引く
境界線(バウンダリー)を意識してみましょう。
「ここから先は相手の問題。ここまでは私の領域」という心の線引きです。
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不倫という裏切りは、どんな理由があっても正当化されません
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あなたが謝って関係を修復する義務はありません
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まずはあなた自身が、あなたの味方になってあげてください
終わりに:謝らなくていい。そのままで、あなたは十分に尊い
あなたが感じている苦しみ、混乱、不安は、すべて当然のことです。
傷つけられたあなたが、さらに自分を責める必要はありません。
「謝ってしまいそうになったときは、立ち止まって深呼吸する」
その小さな一歩が、自分を取り戻すための大切な習慣になります。
どうか、あなたの心が少しずつでも、軽くなっていきますように。