不倫が夫をモンスターに変えるとき
- 2025年05月28日
- 2025年05月28日

「こんな人じゃなかったのに…」
「あの優しかった顔が、今は憎しみすら湛えている」
「まるで感情が通じない“モンスター”みたいだ」
不倫の渦中にいる加害者を目の前にして、そう感じたことはありませんか?
本記事では、不倫がなぜ人の性格を歪ませ、まるで“モンスター”のように変えてしまうのか——その心のメカニズムと背景に迫ります。
■ 優しさや理性を“殺す”自己正当化の罠
不倫をする人が、かつて持っていた“優しさ”や“理性”を捨てるように見えるのはなぜか?
それは、自分の行為に対する罪悪感を無力化しようとする「自己正当化」という心理的防衛の罠に、深くはまり込んでいるからです。
◆ 自己正当化とは「自分を悪者にしないための装置」
人は、本来“正しいこと”と“間違ったこと”を判断できる理性を持っています。しかし、不倫という明らかに倫理に反する行動をしていると、心の中で矛盾(認知的不協和)が生じます。
「悪いことをしている自分」と「自分は正しいと思いたい自分」がぶつかり合うと、人は苦しくなります。
この苦しさから逃れるために人は、“正しい行動に見せかける理由”を探し始めます。それが、以下のような自己正当化のセリフです。
◆ 典型的な自己正当化のセリフとその裏側
不倫をした人がよく口にするセリフの中には、一見もっともらしく聞こえるものが多くあります。けれどその言葉の裏側を冷静に見つめてみると、「罪悪感から逃げるための言い訳」であることが見えてきます。
たとえば、こんなセリフを聞いたことはありませんか?
「こんなことになったのは、お前にも原因がある」
—これは典型的な責任転嫁です。本来なら、自分の裏切り行為について向き合うべきところを、「お前が寂しがらせた」「お前が変わった」などと相手に責任を押しつけることで、自分が悪者にならずに済む構造を作り上げています。
「俺だってつらかったんだ」
—これは、自分の被害者ポジションへのすり替えです。つらい思いをしたのは事実かもしれませんが、それが不倫という行動の正当化にはなりません。けれど、このセリフを使えば「自分も傷ついているから仕方なかった」と、倫理的な判断をぼかすことができます。
「人間だから間違うこともある」
—一見、反省しているように聞こえるこの言葉も、注意が必要です。「間違いだった」と認めることと、それを理由に自分の責任を軽くすることは全く別です。この言葉には、“だからそこまで責めるな”というメッセージが隠れていることが多くあります。
「彼女(彼)は自分を理解してくれた」
—不倫相手を理想化することで、行為そのものを美化しようとするケースもあります。「理解されなかった自分」と「理解してくれた相手」という構図を作り出すことで、自分の裏切りに“正当な理由”を与えようとする心理です。
どの言葉も、表面的には筋が通っているように見えるかもしれません。しかし、その奥にあるのは「自分のしたことと向き合いたくない」「罪悪感を感じたくない」という動機です。
本当の意味で向き合っている人は、相手を責めたり、自分を正当化したりはしません。言い訳ではなく、沈黙や後悔や行動で償おうとします。
だからこそ、こういった“口先の正当化”に惑わされず、冷静にその本質を見抜く視点が必要です。それが、自分を守る最初の一歩となります。
◆ 自己正当化が“優しさ”を消していく構造
自己正当化が繰り返されると、人は徐々に“他者の痛み”への共感力を失っていきます。なぜなら、共感すればするほど、自分が「ひどいことをしている」という現実を直視しなければならなくなるからです。
その結果として:
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パートナーの涙に無関心になる
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子どもの前でも平然と冷たい態度を取る
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家族の存在を邪魔者のように扱う
これらは、「自分は悪くない」という信念を守るために、心の中で理性や感情のスイッチを切ってしまっている状態です。
◆ 自己正当化は“人格の変質”を促進する
最初は罪悪感に揺れていた人も、正当化を繰り返すうちに、「悪いのは自分ではない」と思い込むようになります。
この状態が続くと、以下のような人格的な変化が起きやすくなります。
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責任感の喪失
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共感能力の低下
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自己中心性の強化
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他者との信頼関係の破壊
つまり、優しさも理性も“麻痺”させていく過程こそが、人格の変質を引き起こしているのです。
■ 被害者を追い詰める「モンスターの論理」
不倫をした側が、人間らしい後悔や反省ではなく、冷酷さと自己中心性をむき出しにしたとき、彼らはまるで“モンスターのような論理”で相手を追い詰めてきます。
一見、理屈が通っているように聞こえるその主張。しかし実際は、「責任のすり替え」と「自分勝手な正当化」が巧妙に仕組まれた、加害の言葉です。
「悪いのは俺じゃない。お前が変わったからだ」
一番の典型例です。過去の一部の言動や態度を切り取り、それを不倫の“きっかけ”として利用します。しかし、不満があったのなら対話をする、距離を取る、別れるなどの選択肢があるはず。それらを選ばず裏切りを選んだ時点で、“加害”は成立しています。
にもかかわらず、この論理では「裏切った自分」よりも「不満を与えた相手」に罪をなすりつけてきます。
「もう冷めたから、感情がないんだよ」
冷酷そのもののこのセリフ。まるで“感情がなくなったから仕方ない”と言わんばかりですが、これは感情を持たないことで責任を拒否する危険な言い訳です。
しかも、感情がないと語りながら、怒ったり責めたりする時点で矛盾しています。“冷めた”のではなく、“冷酷になった”だけなのです。
「不倫は愛。傷つけるつもりはなかった」
最も暴力的な言葉の一つです。被害者を現実に深く傷つけながらも、「愛」という言葉で全てを包み込み、加害行為を否定しようとします。
この論理は、「あなたが傷ついているのは、愛を理解していないから」という二重の攻撃に繋がることもあります。
◆モンスターの論理が危険な理由
このような言葉を浴び続けると、被害者は次第に「自分が間違っているのかも」と思い込んでいきます。論理的に見えるぶん、反論しにくい。そして、心が麻痺し始めるのです。
ここで大切なのは、「冷静に考えれば矛盾している」ことに気づく視点です。不倫をしたこと自体の責任は消えません。そこにいくら言葉を重ねても、事実は変わりません。
■ 恋愛感情という“麻薬”が思考を奪う
不倫における恋愛感情は、まるで“麻薬”のように人の思考や判断力を狂わせます。
新しい刺激や秘密の関係は強烈な快感をもたらし、その感情にのめり込むことで正常な判断が難しくなるのです。
1. 脳内で起こる化学反応
恋愛感情が芽生えると、脳はドーパミンやオキシトシンといった快感ホルモンを大量に分泌します。
これにより幸福感や興奮を強く感じ、相手に対する執着や依存が高まります。
その結果、冷静に物事を考えられず、相手の言動や状況の悪い面を見逃してしまうことが増えます。
2. 正常な自己防衛機能の低下
本来、危険や不都合があれば心は警告を発します。しかし、恋愛感情が強いと、その警告がかき消されてしまいます。
つまり、自分の心や体を守ろうとする“防衛本能”が鈍り、無理な状況でも「大丈夫だ」と錯覚してしまうのです。
3. 自己正当化と罪悪感の麻痺
麻薬と同じように、恋愛感情は不倫の罪悪感を薄める役割も果たします。
「愛しているから仕方ない」「相手も同じ気持ちだから悪くない」といった自己正当化が働きやすく、冷静な反省を遠ざけます。
このように、恋愛感情という“麻薬”は人を盲目にし、人格や判断を大きく歪めてしまいます。
だからこそ、感情に飲み込まれそうなときは、一歩引いて自分の気持ちや状況を客観的に見つめることが大切です。
■ それは“本性”なのか?それとも変質なのか?
よくある疑問:「不倫して変わったの?それとも最初からそういう人だった?」
答えはおそらく両方です。
不倫によって人の“本性”がむき出しになると同時に、
罪悪感や恐怖から自分を守るために、人格が“変質”していくのです。
つまり、「今の姿がその人の“すべて”ではない」が、
「いま見えている“冷酷な一面”もその人の現実」だということです。
■人格の変化を見極めるチェックリスト
「前とは何かが違う」と感じたとき、それは感覚ではなく**“変質の兆候”**かもしれません。
以下のチェックリストは、不倫による人格の変化を見極めるための指標です。3つ以上当てはまる場合は、相手の態度に明確な異変があると考えてよいでしょう。
【態度の変化】…“心の距離”が急激に広がる兆し
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会話が事務的・無感情になった(例:「はい」「知らん」など単語のみ)
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表情から感情が読み取れず、目をそらすようになった
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家庭内で存在を無視されているように感じる
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楽しそうな話題でも「興味ない」「どうでもいい」と冷たく返される
ポイント:かつては当たり前に交わしていた会話や表情のやりとりが、急に冷え切っていたら要注意。これは心理的切り離し(ディスコネクト)のサインです。
【攻撃的な言動】…“防衛のための攻撃”が始まっている
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自分の非を指摘すると怒鳴る、あるいは沈黙で支配しようとする
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会話が常に「お前のせいだ」という論調になる
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「そんなつもりじゃなかった」など曖昧な逃げ口上を多用する
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あなたの感情を逆に責めてくる(例:「泣くな、うざい」)
ポイント:罪悪感から逃れるために、相手を「悪者」に仕立てることで自分を守ろうとするメカニズムが働いています。
【言い訳・正当化が増える】…“真実をぼかす”技術が巧妙になる
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嘘に一貫性がなく、話の内容が日ごとに変わる
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「今の自分を認めてほしい」など、自分中心の主張が目立つ
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「完璧な妻(夫)じゃなかっただろ?」など、過去を引き合いに責任転嫁する
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あなたの問いかけに対して論点をずらす、無関係な話題にすり替える
ポイント:「自由」「成長」「自分探し」といった美辞麗句で、責任回避を合理化するのが特徴です。
【共感の欠如】…“感情の共有”が機能不全になる
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あなたの体調不良や涙に対して、反応がない・無視される
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会話が常に自分主体で、他者の立場に立って考えることができない
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傷ついたと言っても「過剰反応」「気にしすぎ」で片づけられる
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以前はあった「ありがとう」「大丈夫?」などの言葉が消えた
ポイント:これは「共感性の鈍化」であり、モラルや倫理観の低下にもつながります。特にこの項目が多い場合、深刻な人格変質の兆候です。
チェックの後にすること
- 3つ以上該当したら、「一時的な感情」ではなく、構造的な人格変化の可能性があると自覚しましょう。
- 自分のせいではないと自分に言い聞かせてください。人格変質は、相手の内面の問題です。
- 安全と尊厳を守るために、信頼できる人や専門機関への相談も視野に入れてください。
このチェックリストは、単なる“気のせい”を「確かな根拠」に変えるツールです。
疑いが確信に変わるのはつらいことですが、それは自分の心を守る第一歩です。
■ 被害者に必要なのは、「現実を直視する力」
多くの被害者はこう考えてしまいます。
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「あの頃の優しさは本物だったはず」
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「また元に戻るかもしれない」
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「自分さえ我慢すれば…」
でも、その優しさはもう“過去のもの”です。
いま目の前にいるのは、不倫という行為に心を飲み込まれた“別の人格”なのです。
現実を直視することは苦しいですが、
あなたの心を守るために必要な一歩です。
■ワーク:冷酷な変化を“見える化”する
- 不倫前と不倫後で、相手の言動がどう変わったかを書き出してみましょう
- その言動に、あなたはどう感じたか?傷ついたか?恐怖を感じたか?を正直に書いてください
- 「このままの関係を続けたら、自分はどうなるか?」と問いかけてみてください
この作業は、「相手の現実」と「自分の感情」を切り離して見つめる訓練になります。
■共依存から抜け出すセルフワーク
Step 1|自分の「役割」を言葉にしてみる
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あなたは関係の中で、どんな役割を無意識に引き受けていたと思いますか?
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例:「相手の機嫌を取る係」「我慢する人」「支えることが当然だと思っていた」など
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その役割は、誰かに求められたものでしょうか?それとも、自分で「そうしなければ」と思っていたのでしょうか?
自覚することで、「自分の思考の癖」に気づく第一歩となります。
Step 2|「相手のため」が口ぐせになっていないかチェック
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「私がいないとこの人はダメになる」
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「私さえ我慢すれば丸く収まる」
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「愛しているから許さなきゃ」
こういった考えが浮かんだことはありますか?
それは“本当に”相手のためだったでしょうか?
それとも「見捨てられたくない」「嫌われたくない」という自分の不安を覆い隠す言い訳ではありませんか?
書き出してみることで、「本音」と「建前」を見分けられるようになります。
Step 3|「NO」を練習する
共依存の関係にあると、「NO」が言えないことが習慣になっている場合があります。
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小さなことで構いません。「今日は連絡したくない」「今は休みたい」など、自分の感情に素直に従ってみることから始めましょう。
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「嫌なことを嫌と言う」「無理な要求には応じない」練習を、1日1つ、実践してみてください。
それは“わがまま”ではなく、健全な自己主張です。
Step 4|理想の人間関係を書き出す
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「本当はどんな関係を望んでいたのか?」
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「どんな扱いを受けたかったのか?」
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「安心して本音を言える相手ってどんな人?」
あなたが本当に求めていた関係性を言語化することで、「いまの関係と本来望む関係のギャップ」に気づけます。
理想を描くことは、心の軸を取り戻す手がかりになります。
終わりに:モンスターから自分を遠ざける勇気を
不倫は、愛ではなく、依存と欺瞞によってつくられた幻想です。
そしてその幻想に飲み込まれた人は、もはや誰かを大切にする力を失ってしまう。
あなたがすべきことは、その闇の中に自分を閉じ込めないこと。
もう十分、苦しんだはずです。
「私はおかしくない。変わったのはあの人のほうだ」
そう認めることが、あなたの再出発の第一歩になります。