弁護士紹介制度を利用した養育費・婚姻費用などが未払いの夫の勤務先の調べ方
- 2024年10月19日
- 2024年10月19日
弁護士が「弁護士照会制度」(弁護士法第23条の2)を利用して、養育費や婚姻費用の未払いがある夫の勤務先を調べる方法を詳しく説明します。この制度は、弁護士が事件処理に必要な情報を公的機関や企業から入手する際に使用され、合法的かつ正式な手続きを経て情報を取得できます。
1. 弁護士照会制度の概要
弁護士照会制度は、弁護士が依頼者のために必要な情報を収集する手段です。例えば、養育費や婚姻費用の未払いが続いている場合、未払い者(夫)の勤務先情報を把握する必要があります。この制度を使えば、弁護士は公的機関や企業に対して、勤務先や給与に関する情報提供を求めることができます。
利用できる状況
- 養育費や婚姻費用の未払いが発生している場合
- 夫の勤務先が不明な場合
- 強制執行を行うために夫の財産(給与など)情報が必要な場合
2. 勤務先を調べるための手続き
以下の流れで弁護士が未払い者の勤務先を調査するための手続きが進められます。
(1) 情報が得られそうな機関を特定する
まず、どの機関に対して照会を行うかを決定します。勤務先情報を得るためには、以下のような機関が対象となります。
- 日本年金機構: 年金の支払いや社会保険の情報から、勤務先を特定することが可能です。特に夫が厚生年金に加入している場合は、その雇用主情報を年金機構から取得することが可能です。
- 市区町村役場: 住民票や戸籍から、夫の職場に関連する情報が記載されていることがあります。また、転居履歴からも勤務先の変更が推測できる場合があります。
- 税務署: 所得税の納税情報から勤務先を特定することが可能です。源泉徴収などの情報を照会します。
(2) 照会の申請
弁護士は、照会先となる機関に対して「弁護士照会制度」を利用して正式な申請を行います。照会には以下の情報が含まれます。
- 依頼者の目的(例: 養育費未払いに関する問題を解決するため)
- 対象者(夫)の基本情報(氏名、住所、可能であれば生年月日など)
- 必要な情報の具体的な内容(勤務先や雇用主の情報など)
(3) 照会先からの回答
照会先となる機関は、弁護士の照会依頼に対して、合法的な範囲内で情報を提供します。例えば、年金機構からは夫が支払っている年金保険料を基に勤務先を特定することが可能です。また、税務署からは源泉徴収を行っている企業名が提供される場合があります。
(4) 得た情報を元に対応を進める
勤務先情報を得た後、弁護士はこの情報を元に、以下のような法的手続きを進めることが可能です。
- 給与差押えの申請: 勤務先が特定できれば、家庭裁判所に対して給与の差押えを申請し、未払いの養育費や婚姻費用を確保することが可能です。
- 強制執行手続き: もし夫が任意に支払わない場合は、裁判所を通じて強制的に給与から未払い分を回収することができます。
3. 弁護士照会の法的根拠と限界
弁護士照会制度は、弁護士法に基づく制度であり、事件処理のために必要な範囲で情報提供を求めることができる強力な手段です。しかし、この制度には以下のような制約もあります。
- 照会に応じる義務がない場合もある: 照会を受けた機関や企業は、法的に照会に応じる義務があるわけではありません。例えば、個人情報保護の観点から、照会に対して回答を拒否することも可能です。
- プライバシー保護の観点: 弁護士は、照会する際に、目的が正当であり、必要最小限の情報収集であることを証明する必要があります。過剰な情報収集や目的外の使用は禁止されています。
4. その他の手段
弁護士照会制度に加えて、弁護士は他の手段を併用することもあります。
- 民間の調査会社への依頼: 合法的な範囲で調査会社に勤務先や財産に関する調査を依頼することがあります。これにより、勤務先以外にも資産の存在を確認することができます。
- 本人への質問や調査: 離婚調停や裁判の過程で、本人に対して勤務先に関する情報を直接質問することもあります。この情報を元に、強制執行の準備を進めることができます。
5. まとめ
弁護士が弁護士照会制度を利用して、養育費や婚姻費用の未払い分を差し押さえるために夫の勤務先を調べるには、主に日本年金機構や税務署、市区町村役場などに対して照会を行います。得られた勤務先情報を元に、給与差押えや強制執行の手続きを進め、未払い分の回収を目指します。この制度は、法的に正当な手続きを経て行われ、依頼者の権利を守るための重要な手段です。