子どもは”家族ごっこ”の道具じゃない ― 子どもを連れ去り不倫相手と一緒に暮らす親の深すぎるエゴ
- 2025年07月08日
- 2025年07月08日

「勝手に家を出て不倫相手と暮らすだけでも信じられないのに、どうして子どもまで連れて行くの――?」
一番守るべき存在であるはずの子どもが、
裏切りの末に始まった“新しい生活”に巻き込まれていく。
親の恋愛が優先され、家庭の崩壊と不安定な人間関係に子どもがさらされるこの状況は、
大人たちの“愛の物語”ではなく、子どもにとっての静かな崩壊かもしれません。
本記事では、浮気をした親が子どもを連れて不倫相手と暮らすことの裏にある心理的メカニズムと、
そこに巻き込まれた子どもが背負うことになる10のリスクを、
感情と事実の両面から深く掘り下げていきます。
■ 1. 「家族ごっこ」への執着
浮気の末に出ていった親が、子どもを連れて不倫相手と“新しい生活”を始める――
その背景には、「もう一度“家族”を作り直したい」「こっちの方が幸せなんだ」と思い込む強い執着があります。
しかし、その家族は本物なのでしょうか?
それともただの“自己満足の演劇”に過ぎないのでしょうか?
● 壊した罪悪感を「やり直し」で帳消しにしたい
不倫によって壊れた家庭、傷つけた配偶者や子ども――
その罪悪感をまっすぐに受け止めることは、並大抵の苦しみではありません。
だからこそ、不倫カップルはこう考えます。
「今度こそ、ちゃんとした家庭を作ればいい」
「過去を引きずるより、“これから”が大事でしょ?」
「子どもも一緒に、新しいスタートを切れば罪は消えるはず」
でもそれは、本当の反省や償いではなく、**自分の罪悪感を“ごまかすためのリセット”**に過ぎません。
現実逃避の上に立った「新しい家庭」は、果たして本物と呼べるのでしょうか。
● 「家族」という形にすがることで、“正当な関係”に見せたい
世間からの非難や、配偶者・周囲の冷たい目線。
その中で不倫カップルが頼りにするのが、「子どもと3人で暮らす」という“外から見た家族の形”です。
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「もう普通の家庭と変わらないでしょ?」
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「恋愛じゃなくて、家族なんです」
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「この人は子どもともちゃんと向き合ってるし」
そう思い込むことで、不倫という関係を“市民権を得た家族”にすり替えていくのです。
ですが、その関係性の始まりが誰かの涙と裏切りの上にあるという事実を、都合よく忘れてしまってはいけません。
● 子どもを“家庭の証明”として使ってしまう危うさ
最も深刻なのは、子どもが「新しい家庭の象徴」や「絆の証」として扱われてしまうことです。
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「子どもが懐いてるから、この関係は正しい」
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「子どもを交えて家族のように過ごしてるから、私たちは間違ってない」
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「子どもも喜んでるし、問題ないよね?」
これは、無意識のうちに子どもを“家庭ごっこ”の小道具のように扱っていることに他なりません。
本来、子どもは親の恋愛関係を証明する道具ではなく、守られるべき存在です。
親の「幸せの再構築」のために、子どもを利用することは、結果として子どもの心を大きく歪めるリスクを伴います。
● 家族ごっこは“ごっこ”でしかない
どれだけ形を整えても、どれだけ「幸せそう」に見えても、
過去の裏切りや嘘から目をそらしたままでは、本当の意味での家族にはなれません。
子どもを巻き込んだ「家族ごっこ」は、
大人の自己満足を叶えるための舞台に過ぎず、
その代償は子どもの心の奥に、静かに蓄積されていくのです。
■ 2. 「子どもも懐いている」という錯覚
不倫相手と子どもが一緒に暮らし始め、表面的には笑っていたり、会話が成り立っていたりすると、
親はつい「もう家族として馴染んでいる」「子どももこの人を受け入れている」と思いがちです。
しかし、それは本当の意味での“心の懐き”ではない可能性があります。
ここではその「錯覚」の裏にある、子どもの本音や防衛反応について掘り下げていきます。
● 子どもは“大人に合わせて生きようとする”生き物
子どもは自分の生存を本能的に大人に委ねています。
特に親権者や同居している大人に逆らっては生きていけないという現実があります。
だからこそ、たとえ不快や不安を感じていても、それを押し殺してこう振る舞うのです。
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空気を読んでニコニコする
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嫌でも「好き」と言ってみせる
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心の不安を見せず、“いい子”を演じる
これは決して懐いているわけではなく、「そうするしかない」という防衛的適応。
子どもの笑顔を「肯定」と捉えるのは、大人の一方的な解釈にすぎません。
● 「いい子にしていれば、また捨てられないですむ」という不安
一度、親の裏切りや家庭崩壊を目の当たりにした子どもは、心の奥に**“また誰かに見捨てられるかもしれない”**という強い不安を抱えています。
その不安から、子どもは自らこう判断します。
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「この人を嫌ったら、またお母さんもいなくなるかもしれない」
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「新しい環境に馴染まなきゃ、自分の居場所がなくなる」
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「機嫌を損ねたら、もう優しくしてもらえないかも」
こうした感情の根っこには、**“拒絶されないための順応”**があります。
つまり、好意的な態度は“信頼”ではなく“恐れ”に基づいている可能性があるのです。
● 「懐いている=心を開いている」ではない
親は「懐いてる」と感じたとき、安心してしまいます。
でも、その“懐き”と“心を開いている”という状態はまったく別のものです。
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懐いているように見えて、実は無表情な感情表現
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甘える一方で、自分の本音は決して話さない
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仲良くしているようで、誰にも本当の不安を吐き出せない
つまり、「表面上のなつき」と「内面の安心感」はイコールではありません。
子どもは、大人の期待に応えるために**“演じる力”を持ってしまうほど敏感で繊細**なのです。
● 懐いているように“見えるだけ”かもしれない
子どもの態度が大人に都合よく見える時ほど、注意が必要です。
笑っていても、従順に見えても、それが恐れから来るものなのか、信頼から来るものなのかは、よほど丁寧に見なければわかりません。
子どもが「何も言わない」「順応している」ことに安心してはいけません。
その沈黙の奥にある「不安」「緊張」「寂しさ」に、大人が先に気づく責任があるのです。
■ 3. 「親権を取る」ことを自分の勝利と勘違いする心理
本来、親権とは「子どもを守るための責任」であって、勝ち負けの道具ではありません。
しかし現実には、離婚や別居の過程で、親権の獲得をまるで「勝利の証」と受け取る人が少なくありません。
特に、自分の不倫が原因で家庭を壊したにも関わらず、子どもを引き取った側が
「親権を持っている=自分が正しい」と考えることがあります。
その背景にある心理を、ここで3つの観点から掘り下げていきます。
● 「親権=道徳的優位」と思い込む防衛心理
不倫をしたという後ろめたさ、周囲からの非難。
その中で、“親権が取れた”という事実を、自分の正しさの証拠として利用してしまう人がいます。
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「裁判所だって私を親にふさわしいと判断した」
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「子どもが私を選んだんだから、私が正しい」
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「ほら、見て。私は“子どもを守っている親”なんだよ」
こうした思考の裏には、自分の過ちから目を逸らしたい心理、防衛機制としての自己正当化が強く働いています。
でも、それは「子どもの幸せ」を主語にしていない思考です。
● 子どもを「勝利の証」や「戦利品」のように扱ってしまう危険性
親権を争った末に得た場合、あるいは一方的に連れて出た場合、
その親が無意識にやってしまうのが、子どもを“自分の正しさの象徴”のように扱うことです。
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「私には子どもがいる。だからこっちが“本当の家庭”」
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「あの人は子どもに見捨てられた親。私の勝ち」
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「子どもが幸せそうだから、不倫の何が悪いの?」
このような思考は、子どもを“主語”にしているように見えて、実は完全に“自分本位”。
子どもの存在が、自分の行動を正当化するための「盾」になってしまっています。
● 「親権を取ったから好きにしていい」という勘違い
親権を得たことで、まるで“子どもの人生を完全に掌握できる”と誤認する親もいます。
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「私が親権者なんだから、どこで誰と住もうが自由」
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「今のパートナーを子どもがどう思うかなんて関係ない」
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「文句があるなら親権を取ればよかったんでしょ?」
これらはすべて、**“親権を力や所有物と錯覚している危険な思想”**です。
親権者だからこそ、「子どもの人生に責任を持ち、環境を選ぶ慎重さ」が求められるのに、
それを“免罪符”のように使ってしまうことは、まさに子どもの権利を侵害する行為です。
● 子どもは勝ち負けの道具ではない
親権は、子どもを“自分の手で守る”ための責任であって、
誰かを打ち負かすための武器ではありません。
親同士の対立や、自分の正しさを証明したいという欲に巻き込まれた子どもは、
「自分は戦利品だったのかもしれない」という深い傷を心に残します。
子どもを「持っている」ことで自分が優位に立ったと思い込む前に、
その子が本当に安心して、自由に、愛されていると感じられる環境にいるかどうかを見つめ直す必要があるのです。
■ 4. 「子どもが理解してくれる」と思い込んでいる
不倫をして家を出ていった親が、子どもに状況を説明したときに、子どもが泣かなかったり、特に反発しなかったりすると、親はこう思いがちです。
「ちゃんと話せば、子どもは分かってくれる」
「理解してくれたから、もう大丈夫」
「私たちの愛を子どもも受け入れてくれた」
でも、子どもは本当に理解してくれているのでしょうか?
それは“納得”でも“同意”でもなく、ただの“沈黙”や“順応”ではないでしょうか。
● 「大人の事情」を説明すれば理解してくれるという思い上がり
浮気した親がよく言うのは、「ちゃんと説明したから子どももわかってる」という言葉です。
ですが、どれだけ丁寧に言葉を尽くしたとしても、子どもにとって“不倫”の複雑さは理解しようがありません。
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「お母さんとお父さんはもう夫婦じゃないの」
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「新しい人と暮らすけど、あなたのことは変わらず愛してるよ」
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「大人にもいろいろあるんだよ」
――この“いろいろ”を、子どもはどこまで処理できるでしょうか?
幼い心には、親の裏切りや関係の混乱を理解する“器”がまだないのです。
理解したのではなく、混乱したまま言葉を飲み込んだだけかもしれません。
● 「反発しない=納得した」ではない
説明に対して子どもが何も言わない、泣きわめかない、淡々としている――
そんな様子を見ると、親は安心し、「この子はちゃんと受け入れてくれた」と錯覚します。
でも、それは本音を飲み込んで“感情を止めてしまった”だけの可能性もあるのです。
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「泣いたってどうにもならない」
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「嫌って言ったらもっと大変になる」
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「今の生活を壊したくない」
これは“納得”でも“同意”でもなく、あきらめと自己抑圧です。
子どもは、親の顔色を見ながら「何も言わないこと」が一番安全だと学んでしまいます。
● 「親の幸せ」を願う子どもの健気さを誤解してはいけない
特に子どもは、親の表情や感情にとても敏感です。
たとえ複雑な状況でも、「親が笑っているなら、自分が我慢すればいい」と考えることがあります。
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「ママが幸せならそれでいい」
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「僕が悲しそうにしてたら、ママが困るよね」
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「あの人のこと、嫌いって言ったらママ泣いちゃうかも」
子どものこうした“健気さ”や“気遣い”を、「理解してくれてる」と都合よく解釈してしまうのは、
子どもの優しさに甘える身勝手さです。
本当はその優しさの奥に、自分の本音を飲み込みながら耐える小さな心が隠れているかもしれません。
●「理解してくれるだろう」は親の甘え
子どもは、大人が思っている以上に敏感で、空気を読み、そして黙ります。
でもその沈黙の中には、怒り、悲しみ、不安、寂しさといった多くの感情が隠されているのです。
「理解してくれた」というのは、親が安心したいために作り出した幻想でしかないのかもしれません。
子どもは理解しているのではなく、**“親を理解しようと必死に合わせているだけ”**なのです。
■ 5. 子どもにとっての「安心の場」が崩れる
子どもにとって家庭は、ただの“生活空間”ではありません。
それは、自分が無条件に受け入れられ、守られ、安心して感情を出せる「心の居場所」です。
しかし、親の不倫をきっかけに家庭が崩壊し、しかもその親が浮気相手と暮らし始めたことで、
子どもは一番守られるべき場所を失ってしまうのです。
● 家庭=安心できる場所、という土台が崩れる
「家に帰れば親がいる」
「泣いたら抱きしめてもらえる」
「何があっても味方でいてくれる」
――そんな当たり前が、子どもにとっては**“生きる上での基盤”**です。
それが突然、不倫という裏切りで壊されたとき、
子どもは「自分は守られていない」「家はもう安全な場所ではない」と、無意識に感じ取ります。
その喪失は、生活の不安定さだけでなく、情緒の根幹を揺るがす重大な問題です。
● 新しい環境は「安心」ではなく「緊張と混乱」の連続
浮気相手と暮らすようになった子どもは、日々の暮らしの中で以下のような“心の緊張状態”にさらされます。
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誰に本音を話していいかわからない
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浮気相手に気を遣い続けなければいけない
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どこまで甘えていいのか線引きができない
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自分が“歓迎されている存在”か不安になる
このような環境下で子どもが感じるのは、安心ではなく“警戒”と“遠慮”です。
笑顔の裏に、不安と孤独がひっそりと隠れていることに、大人が気づけるでしょうか。
● 安心の欠如は「心の防御反応」を引き起こす
子どもが安心感を得られない環境で育つと、
徐々に感情を表に出すことをやめてしまったり、人と深く関わることを避けるようになります。
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必要以上に大人びた態度をとる
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怒りや悲しみを感じても、感情表現できなくなる
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常に周囲を気にして“いい子”を演じてしまう
これは、**子どもなりの“心を守るための反応”**です。
しかしそれは同時に、感情発達や愛着形成に深刻な影響を与えることにもつながります。
● 子どもの「安心の場」は一度壊れると簡単には戻らない
たとえ数年後、親が後悔し、関係修復を望んだとしても――
子どもにとって「一度崩れた安心の場」を取り戻すのは、とても困難です。
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「もう一度信じていいのか、わからない」
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「また裏切られるかもしれない」
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「期待するだけ、傷つくのが怖い」
こうした不信感は、人間関係全体への不安定さにつながり、長期的に心の土台を脅かします。
●「安心」は与えるもので、取り上げてはならないもの
親がどんなに「新しい生活に慣れてほしい」「家族としてやり直したい」と願っても、
それは子どもにとって“安心の再構築”になるとは限りません。
子どもにとっての安心とは、
「何があっても、ここに帰ってきていい」と無条件に思える場所の存在。
浮気という裏切りは、子どもからその大切な“居場所”を奪う行為でもあるのです。
一度壊した安心は、取り戻すことはできないかもしれない――
その重みを、どうか大人が忘れないでいてほしいと思います。
■ 6. 浮気相手からの精神的・身体的リスク
――親が選んだ相手が、必ずしも「子どもにとっての安全な存在」とは限らない
浮気相手と一緒に暮らすという選択は、本来守られるべき子どもを未知の人間関係の中に放り込むことを意味します。
どれだけ「優しそうに見える相手」であっても、血のつながりも信頼関係もない他人です。
その相手が、子どもにとって「安全」とは限らない――この前提を、大人は決して軽視してはいけません。
● 精神的支配やモラルハラスメントの可能性
「血がつながっていない子ども」との生活には、我慢やストレスがつきものです。
なかには、その苛立ちを無意識に子どもに向けてしまう浮気相手も存在します。
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「お母さんに迷惑かけないでね」
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「そんな態度とるなら出て行きなさい」
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「あなたのせいで空気が悪くなるのよ」
こうした発言や態度は、明確な暴力ではなくても、心理的なコントロールや圧力となって子どもを追い詰めます。
子どもはそれを「自分が悪いんだ」と受け止め、自尊心をすり減らしていくのです。
● 身体的虐待に発展するリスク
浮気相手が「親の代わり」を演じようとしたとき、自分に従わせようとする支配的態度が強く出ることがあります。
とくに、子どもが思春期だったり、心を開かない態度を見せた場合、感情的なぶつかり合いが起きやすくなります。
そこから発展してしまうケース:
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暴言や威嚇、叩くなどの身体的制裁
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子どもを無視したり孤立させる
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外での失敗を家で八つ当たりする
浮気相手には「親としての責任」や「愛着形成の土台」がない場合が多く、
関係がうまくいかなくなると、“子どもへの愛情”よりも“イライラや感情のはけ口”が優先されてしまう危険性があります。
● 子どもが「親に言えない」ことが最大のリスクになる
仮に子どもが精神的・身体的な苦痛を受けていたとしても、問題が表面化しづらいのがこのケースの特徴です。
なぜなら、子どもはこう考えるようになるからです。
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「この人の悪口を言ったら、お母さんが悲しむ」
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「また自分が捨てられるかもしれない」
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「言っても信じてもらえないかもしれない」
その結果、親には何も言えず、苦しみを一人で抱え続けてしまうのです。
この“沈黙”が、問題を長期化・深刻化させ、取り返しのつかないトラウマとなることもあります。
●「信頼できる恋人」≠「安全な親代わり」
浮気相手がどれほど親にとって魅力的でも、
子どもにとってその人は、「安心できる存在」とは限りません。
むしろ、血縁も信頼関係もない状態での同居は、
心理的・身体的に極めて脆く、不安定な関係性なのです。
「子どもは慣れれば大丈夫」
「うまくやっているように見える」
――その“見た目の平穏”の裏に、子どもが言えない苦しみを抱えていないか。
親には、その声なきサインに気づく責任があります。
■ 7. 価値観の混乱と自己否定の始まり
親の不倫によって家庭が崩れ、浮気相手との生活が始まったとき、
最も大きな影響を受けるのは、子ども自身の「価値観の土台」です。
子どもにとって、親は人生で最初に接する“正しさ”の象徴。
その親が嘘をつき、裏切りをして、それでも幸せそうに振る舞っている姿を目の当たりにすると――
子どもは世界のルールがぐらぐらと崩れ始めるのです。
● 「正しい」と思っていたものが崩れる混乱
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「嘘をついちゃダメって言ってたのに…」
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「家族を大事にしろって言ってたのに…」
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「じゃあ、今までの教えって何だったの?」
子どもにとって、親の言葉と行動があまりにも矛盾して見えるとき、
“何が正しくて、何が間違いなのか”がわからなくなります。
それは、単にモヤモヤするだけでなく、倫理観や自己判断力の土台を揺るがす深刻な影響です。
この混乱は思春期以降、自分自身の人間関係や恋愛観にも影を落とし、
「どうせ人は裏切る」「自分さえ良ければいい」といった歪んだ信念に繋がってしまうこともあります。
● 「自分は本当に大切にされてるのか?」という疑念
親が自分の恋愛や新しい生活を優先し、
子どもが「後回し」にされているように感じたとき――
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「自分って、親の幸せの“ついで”なのかな」
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「この家にいてもいいのかな」
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「私は邪魔者だったのかもしれない」
そんな思いが心の中に芽生え始めます。
そしてそれはやがて、「自分は大切にされる価値がないのかもしれない」という自己否定へとつながります。
子どもは直接言葉にしなくても、行動や表情、沈黙でそのSOSを出しているかもしれません。
● 大人に合わせ続けることで、自分を見失っていく
浮気相手や親の顔色をうかがいながら生活する日々の中で、
子どもはだんだんと“自分の気持ち”を封じ込めていきます。
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本当は嫌でも、ニコニコしてしまう
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不安や怒りを押し殺して、無難に過ごそうとする
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「自分の気持ちなんて言っても意味ない」と思い込む
これは、心を守るための“適応”であると同時に、
「自分の感情に正直になる力」を失っていくプロセスでもあります。
そうして、いつの間にか“自分”という存在の輪郭がぼやけてしまう。
これが後のうつ傾向・自己肯定感の低下・人間関係の不安定化へとつながる危険性をはらんでいるのです。
● 心の中に“崩れてしまった地図”を抱えたまま、大人になっていく子どもたち
子どもが成長していくうえで必要なのは、「正しさ」と「安心」の基準です。
それが大人の都合によって壊され、「裏切りでも幸せになれる」「嘘も愛なら許される」といった歪んだメッセージが刷り込まれると、
子どもはどこに向かえばいいのか分からなくなります。
そしてその混乱の中で、自分の存在意義までも疑うようになってしまう――
これこそが、親の不倫が子どもの心に与える“静かで深い傷”なのです。
■ 8. 子どもが「第三者」としての目を持てなくなる
家庭の中で起きる“不倫”という裏切り――それは、子どもにとって到底理解しきれない「大人の矛盾」を突きつける出来事です。
その中で、子どもは徐々に「善悪の基準」「感情の整理」「他者の立場を想像する力」を失っていきます。
特に、子どもが一方の親(不倫加害者)と同居していたり、浮気相手と暮らしている場合、
偏った価値観を植えつけられたまま育ってしまい、**「自分で物事を客観視する力=第三者視点」**を養う機会を奪われてしまうのです。
● 子どもは“大人の言葉”をそのまま信じてしまう
子どもは、基本的に親の語る物語を疑いません。
「お父さんが悪かったの」
「私たちは運命だったの」
「あなたには関係のないことだからね」
――そんな言葉を毎日聞かされて育つと、子どもはそれが“唯一の真実”だと信じ込んでしまいます。
つまり、「もう一方の親の視点」や「社会的な価値判断」など、別の視点に触れる機会を奪われてしまうのです。
その結果、「第三者として物事を見る」「複数の立場から考える」という力が育たなくなります。
● 「間違いを正す」力より、「間違いを正当化する」力が身につく
浮気や裏切りのような“本来なら否定されるべき行為”が、
家庭内で「正当な愛」「選ばれた幸せ」として語られていると、
子どもはその歪んだロジックを、そのまま自分の思考パターンとして受け入れてしまいます。
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「好きになったんだから仕方ないよね」
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「誰にも迷惑かけてないから大丈夫」
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「バレなきゃ問題じゃない」
これは、物事を“正す”倫理観ではなく、“都合よく捉える力”だけを育ててしまう危うさがあります。
やがて子ども自身が誰かを傷つけたり嘘をついたときにも、
「これは愛だから」「自分なりの正しさだから」と、自分を疑う視点を持てなくなってしまうのです。
● 「もう一人の親」を客観的に評価できなくなる
加害者である親と生活を共にする場合、子どもはその親に気に入られること、傷つけないことを無意識に優先するようになります。
そうすると、「もう一方の親=被害者」に対する評価も歪められていきます。
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「お父さんが悪かったんでしょ?」
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「自分が捨てられたのは、弱かったからじゃない?」
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「文句を言うほうが悪いんじゃない?」
こうして、真実を見極める“心の目”を閉ざし、自己防衛として偏った感情を刷り込まれてしまうのです。
これはのちに、他人との信頼関係やパートナーシップにおいても、
「誰の視点で物事を判断するか」が大きく偏るリスクとなり、自他の境界が曖昧になっていきます。
● 「第三者の目」を持てない子は、自分すら信じられなくなる
客観的に物事を見る力は、生きるうえで必要な「判断力」と「人間関係力」の土台です。
しかし、家庭の中で偏った価値観や一方的な正義だけを学ばされた子どもは、
その力を奪われてしまいます。
やがて子どもは、「自分が何を感じているのか」「何が正しいのか」すらわからなくなってしまう――
それは、“心の自由”を奪われた状態とも言えるのです。
親が大人の都合で子どもに真実を見せない選択をしたとき、
子どもは「真実を見る力」そのものを奪われてしまう。
その代償は、想像以上に深く、長く続いていくのです。
■ 9. 将来の人間関係・恋愛観に影を落とす
子どもは、親の背中を見て「人との関わり方」や「愛の形」を学びます。
その親が不倫という裏切りをしていたと知ったとき、
子どもの中に形成されるのは、**「愛=信じてはいけないもの」**という、根本的な信頼不全です。
それはやがて、大人になった子どもの人間関係や恋愛観に暗い影を落としていきます。
● 愛すること=傷つくこと、という信念
親の不倫を見て育った子どもは、「愛した人が裏切る」姿を間近で見ることになります。
その経験から、以下のような思い込みが心の深層に根付きます。
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「人を本気で好きになると裏切られる」
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「愛されたって、いつか捨てられる」
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「幸せを感じた分だけ、傷も大きくなる」
これは心理学でいう**「スキーマ(認知の枠組み)」**に強く影響し、
将来の恋愛関係において、常に疑い・不安・防衛心が付きまとう原因となります。
● 過度な依存、または極端な回避傾向
自己肯定感が低く育った子どもは、恋愛関係において極端な行動に出やすくなります。
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「愛されている実感がないと不安で仕方ない」→ 過度にしがみつく「依存型」
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「親密になると傷つくのが怖い」→ 自分から距離を取る「回避型」
これは**「愛着スタイルの歪み」**であり、
人との健全な関係性を築くうえで大きな障害となります。
恋愛が「癒し」や「安心」ではなく、「不安定さ」や「自己防衛」の場となってしまうのです。
● 「幸せな家庭」への不信感・諦め
不倫によって壊れた家庭を見て育った子どもは、
結婚や家庭に対して希望を持ちづらくなります。
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「結婚してもどうせ浮気される」
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「家族って簡単に壊れるんだ」
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「そもそも“誠実さ”なんて幻想じゃないか」
これは、恋愛や結婚に対する**「未来への希望」を奪われた状態**でもあります。
無意識のうちに、家庭を築くことや長期的なパートナーシップに対して臆病になり、
それがまた孤独を深めてしまうという悪循環に陥ります。
● 人との距離感がわからなくなる
不倫による家庭の混乱の中で、子どもは「安心できる人」「裏切る人」「信じていい人」の見極めがつかなくなります。
その結果、以下のようなことが起こりがちです。
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過度に警戒し、心を開けない
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急激に距離を詰めすぎてしまう
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自分の感情にフタをしてしまう
これは、「愛着障害の芽」となるリスクをはらみ、
他者とのつながりに不安定さをもたらします。
●子どもが背負わされた「愛の歪み」は、時間と理解でしか癒せない
親の不倫は「大人の問題」と片づけられがちですが、
その影響は、子どもの将来にまで静かに、しかし確実に浸透していきます。
子どもが「愛してもいい」「信じてもいい」「裏切られても、自分の価値は変わらない」と
心から思えるようになるには、時間と、周囲の理解・サポートが必要です。
しかし、それは決して簡単ではありません。
■ 10. 子どもの声が、どこにも届かない
家庭内で起きた不倫という大人の問題のなかで、最も無力な立場に置かれるのは子どもです。
浮気相手と暮らすようになった日常の中で、子どもは「感じること」をやめ、「話すこと」を諦め、
心の奥でこうつぶやくようになります。
――「どうせ誰にもわかってもらえない」と。
ここでは、子どもの声が届かなくなる理由と、その深刻な影響を項目ごとに深掘りしていきます。
● 「親の幸せ」を優先し、自分の気持ちを抑え込む
不倫をした親が、新しいパートナーと幸せそうにしている姿を見ると、
子どもは無意識に「自分が口を出してはいけない」と思うようになります。
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「言ったら親を困らせてしまう」
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「親がやっと笑えるようになったのに水を差せない」
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「我慢すれば、またうまくいくかもしれない」
これは、子どもなりの“気遣い”という名の自己犠牲。
本音を言わないことが“家族のため”と信じ、言葉を飲み込んでしまいます。
● 話す相手がいない、または話しても理解されない
多くの子どもは、家庭内の複雑な事情を他人に話すことに強い抵抗を感じます。
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「恥ずかしくて友達に言えない」
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「先生に話しても、どうせ変わらない」
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「親戚や祖父母にも気を遣ってしまう」
その結果、“どこにも自分の本音を預けられない”という孤立状態に陥ります。
信頼できる大人の不在は、子どもにとって大きな心の空白をつくります。
● 声を上げたところで何も変わらないという“学習された無力感”
「勇気を出して話したのに、否定された」
「本音を言っても、状況は何も変わらなかった」
――そんな経験を重ねることで、子どもは「もう何を言っても無駄だ」と感じてしまいます。
これは心理学で言う**「学習された無力感(Learned Helplessness)」**という状態で、
自分の行動が状況を改善しないと学習してしまうと、やがて何も訴えなくなってしまいます。
声を上げることをやめた子どもは、心の中で静かに“諦め”を育てていくのです。
● 大人にとって「都合の悪い真実」は聞き入れられない
子どもが勇気を出して「つらい」「嫌だ」と訴えても、
大人の側がそれを“わがまま”や“混乱”として片づけてしまうケースも少なくありません。
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「そんなこと言わないの」
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「大人になればわかる」
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「今はこうするしかないでしょ」
このような反応は、子どもに“自分の声は軽んじられている”という感覚を残します。
その体験の積み重ねは、「もう誰にも何も言いたくない」という深い孤独に繋がっていきます。
● 子どもが沈黙を選ぶとき、それは「声が届かない」と悟ったとき
子どもが言葉を発しないとき、それは「何も感じていないから」ではありません。
むしろ、「もう伝えても無駄だ」「誰にも信じてもらえない」と悟ったからこそ、沈黙を選んでいるのです。
その沈黙の裏には、叫びたいほどの悲しみ、不安、怒り、孤独が隠れています。
だからこそ、大人は「声にされない声」に耳を澄まさなければなりません。
本当の意味で子どもを守るとは、
「ちゃんと聴く姿勢」と「本気で向き合う覚悟」を持つこと――それに尽きるのです。
■ まとめ:子どもは“大人の恋愛”の犠牲にしていい存在ではない
浮気相手と暮らすことで、親自身は新しい人生を始めたつもりかもしれません。
でも、その足元には、声を上げられないまま揺れる小さな心があることを忘れてはいけません。
「私は子どものことも大事にしてる」
「愛してるから連れてきた」
その言葉の裏に、本当に子どもの人生を考えた行動はあるのでしょうか?
親の幸せと、子どもの幸せは別物です。