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生活費をくれない・同居に応じないなど家庭を顧みない配偶者の行為は悪意の遺棄に該当します。
悪意の遺棄とは裁判で離婚が認められる法的離婚事由の一つで、悪意の遺棄が認められれば離婚や慰謝料を請求することが可能です。
生活費をくれない夫と離婚したい、慰謝料を請求したいとお考えの方は参考にしてみてください。
悪意の遺棄とは
悪意の遺棄とは、結婚において夫婦が果たすべき義務に対して違反する行為をいいます
民法では「夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない」と規定されています。
つまり、夫婦の間には同居・協力・扶助する3つの義務があり、これらに違反すると悪意の遺棄としてみなされます。
悪意の遺棄は裁判で離婚が認められる「法的離婚事由」の一つとして定められており、悪意の遺棄が認められれば離婚や慰謝料請求することも可能です。
また、ここでいう「悪意」とは、結婚生活を破たんさせようとする行為や、破綻しても仕方ないという意思で正当な理由なく、別居する・生活費を渡さないなど夫婦の義務を果たさないことをいいます。
「遺棄」とは正当な理由なく、同居・協力・扶助義務を怠ることをいい、配偶者を見捨てる行為をいいます。
結婚において夫婦が果たすべき3つの義務は以下で説明します。
同居義務
同居義務とは夫婦が一緒に暮らす義務のことをいいます。
正当な理由なく、一方的に家を出て同居を拒めば悪意の遺棄としてみなされますが同居義務に強制力はなく、審判で同居するように命じられても同居を強制することはできません。
また、別居するのに正当な理由がある場合は、同居義務違反にはなりません。
例えば、配偶者からの暴力から身の安全を守るためや、既に離婚の話し合いを進めている状態からの別居は悪意の遺棄とはみなされないのです。
協力義務
協力義務とは夫婦生活のなかで互いに協力する義務のことをいいます。
例えば、夫が妻に対して家事を強制することや生活費を一切出さないなどといった行為は協力して夫婦生活をおくる意思がないと考えられます。
また、別居中であっても法律上の夫婦である限り、配偶者の生活が同程度に保持できるように収入の高いほうが低いほうに対して婚姻費用を支払わなければなりません。
婚姻費用には生活費・居住費・子どもの養育費などが含まれており、もし相手から支払われなければ家庭裁判所に婚姻費用分担請求を申し立てる必要があります。
扶助義務
扶助義務とは、夫婦の一方が扶助を必要とする場合には、他方はそれを援助しなければならない義務のことをいいます。
例えば、妻が病気や怪我で動けなくなった場合、夫は妻に対して同程度の生活をおくれるための支援や、生活費などを出して面倒をみる必要があります。
悪意の遺棄に該当するケース
配偶者が正当な理由もなく、以下のような行為をした場合、悪意の遺棄に該当する可能性があります。
具体的にどのようなケースがあるのが、典型的な事例を交えながら説明します。
生活費を渡さない
生活費を一切払わないことは、悪意の遺棄に該当します。
特に、生活費を渡さないことによって配偶者や子どもが困窮してまともに食事ができない、適切な医療を受けることができない状況に置かれた場合、悪意の遺棄としてみなされる可能性が高くなります。
また、それは同居していても同居していなくても同様で、夫婦関係である以上は協力扶助義務があるからです。
ただし、夫婦が共働きで同じくらいの収入を得ている場合、夫が妻に生活費を渡さなかったとしても生活に支障がなければ生活費を渡さないだけでは悪意の遺棄に該当しない可能性があります。
正当な理由もなく別居する
正当な理由や相手の同意もなく別居した場合は「同居義務違反」となり、悪意の遺棄に該当する可能性があります。
ただし、仕事の都合や子どもの出産・育児のためなど別居に正当な理由がある場合は悪意の遺棄には該当しません。
なお、正当な理由がある別居は同居義務違反にはなりませんが、別居中の生活費を渡さないことは協力義務や扶助義務を怠っているとみなされる可能性があります。
浮気相手の家に住んでいる
浮気相手の家に入り浸って自宅に帰ってこない場合、悪意の遺棄に該当します。
さらに、浮気相手の家に入り浸っていれば配偶者以外の異性と肉体関係を伴う交際をしたとみなされ貞操義務に違反しているとみなされます。
そのため、悪意の遺棄と不貞行為という二つの不法行為を行ったとして高額な慰謝料や離婚も認められやすくなるでしょう。
配偶者を自宅から追い出す
自ら家を出るだけではなく、DVやモラハラなどによって配偶者を家から追い出すことも悪意の遺棄に該当します。
この追い出すという行為は、直接的に追い出さなくてもDVやモラハラで相手が同居していることに耐えられない状況を作れば、追い出した行為をしたとみなされます。
配偶者の看護をしない
配偶者が怪我や病気で苦しんでいるのに、必要な看護をしないことは怪我や病気の程度によっては悪意の遺棄に該当します。
健康なのに仕事をしない
なんの理由もなく仕事をしないことによって家族の生計が立てられなくなり、困窮している場合には悪意の遺棄に該当する可能性があります。
ただし、仕事をしない理由が怪我や病気で療養している場合は悪意の遺棄には該当しません。
家事や育児をしない
ただ単に、家事や育児に協力しないという状況だけでは悪意の遺棄には該当しません。
しかし、家事や育児は女性の務めという昔ながらの差別的な考えや、まったく協力せずにその状況が改善される見込みがない場合は悪意の遺棄に該当する可能性があります。
悪意の遺棄に該当しないケース
夫婦の義務を果たせなかったとしても、悪意を持って積極的に婚姻関係を破たんさせようとする意志がなければ悪意の遺棄としてみなされません。
夫婦の間で合意がある場合や、夫婦の結婚生活を継続させるためといえる正当な理由があれば悪意の遺棄とはいえません。
次のようなケースは、その理由に悪意がないため、悪意の遺棄には該当しません。
- 単身赴任による別居
- DVやモラハラから避難するための別居
- 夫婦関係を修復するための別居
- 夫婦関係が破たんしたゆえの別居
- 育児や教育のための別居
- 出産や療養のための別居
- 病気や怪我のため、仕事や家事ができない
- 失業中のため、生活費を渡せない
悪意の遺棄は離婚や慰謝料が請求できる
悪意の遺棄は裁判所で離婚が認められる法的離婚事由の一つになるため、悪意の遺棄が認められれば離婚や慰謝料をすることが可能です。
しかし、裁判においては悪意の遺棄は立証が難しく、認められるケースが少ないので離婚や慰謝料請求が認められるためには、他の不法行為と併せて主張する必要があります。
悪意の遺棄に該当する具体的な事情は、法的離婚事由の一つ「婚姻関係を継続し難い重大な事由」に該当していることが多くあります。
そのため、裁判所に悪意の遺棄が否定されても、婚姻関係を継続し難い重大な事由が認められることもあるので二つの離婚原因を主張することが重要です。
請求できる慰謝料の金額
悪意の遺棄によって認められる慰謝料の相場は50万~300万程度で状況によって金額は異なりますが、基本は100万円位で収まることが多いです。
また、悪意の遺棄に該当する行為が長期に及んだ場合や、不貞行為など他の法的離婚事由が認められれば慰謝料の増額が見込まれます。
慰謝料や離婚請求に必要な証拠
悪意の遺棄を理由に離婚や慰謝料を請求するには悪意の遺棄が行われたことを証明できる証拠を揃えなければなりません。
悪意の遺棄が行われたことを証明する証拠としては、以下のようなものが挙げられます。
通帳の写し
通帳の写しは、生活費の送金がされていないことを証明できます。
また、手渡しで生活費を払っていたと言われないように家計簿などでもしっかりと記録を取るようにしましょう。
住民票や賃貸契約書の写し
住民票の写しは配偶者が別居を開始して住民票を移していれば、同意を得ずに勝手に別居していた事実を証明することができます。
また、相手が別居先を借りた際の賃貸証明書も同様に別居の事実を証明する資料となりますので悪意の遺棄の証拠となります。
メールや会話の録音
相手との別居の際のやり取りがわかるメール・音声データなどは別居に同意していなかったことを証明する証拠になります。
また、相手に対して同居や生活費の支払いを求めたものの、無視や支払いを拒否する返信、及び音声データは夫婦の義務を果たしていないとして悪意の遺棄を証明することができます。
DVで受けた怪我の診断書
DVで受けた怪我の診断書や写真は身の安全を守るために別居したことを証明することができます。
また、DVやモラハラは別居の正当性を証明するだけではなく、家庭裁判所で離婚が認められる法的離婚事由とされているため、離婚や慰謝料請求をすることが可能です。
婚姻費用を請求する
婚姻費用とは同居・別居にかかわらず、法律上の夫婦である限り収入の多いほうから支払われる生活費全般のことです。
夫婦は互いに扶助義務があるので婚姻費用は請求されれば支払う義務あり、例外を除いては婚姻費用の分担義務から逃れることはできません。
もし、相手との話し合いで婚姻費用の支払いに合意を得られない、もしくは拒否された場合は家庭裁判所に「婚姻費用分担請求調停」を申し立てることができます。
調停では調停委員が夫婦の意見や事情を聞きながら妥当な婚姻費用の金額を提示するなどして、両者の合意を目指していきます。
さらに、調停で合意が得られなかった場合は最終的に審判に移り、裁判官が算定表を基に婚姻費用を決め、審判書が作成されます。
審判が下っているにもかかわらず、婚姻費用を支払わない場合は強制執行によって相手の預貯金や給与を差し押さえることができるので、生活費が支払われない心配がなくなります。
まとめ
悪意の遺棄は裁判所で離婚がみとめられる法的離婚事由の一つです。
悪意の遺棄が認められれば離婚や慰謝料を求めることができますが、悪意の遺棄は立証が難しく、他の不法行為と併せて主張する必要があります。
特に、悪意の遺棄に該当する行為では不倫相手の家に入り浸って自宅に帰らず、生活費を渡さないケースが多く見受けられます。
不貞の証拠が得られれば、悪意の遺棄と貞操義務違反の二つの不法行為を行ったとして高額な慰謝料が見込めます。
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