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未払いの養育費に対して強制執行をすることで相手の給料や預貯金を差し押さえることができます。
養育費の支払いは親の重大な義務で離婚しても親の扶養義務があるため、養育費の支払いから免れることはできません。
強制執行で養育費を払わない元配偶者の財産を差し押さえたいとお考えの方は参考にしてみてください。
養育費とは
養育費とは子どもを監護・教育するために必要な費用のことです。
未成熟の子(経済的・社会的に自立していない子)が自立できるまでに要する費用で、具体的には衣食住に必要な経費・教育費・医療費などが該当します。
子どもを監護する親(観護親)は子どもを監護していない親(非監護親)に対して子どもを養育するのに必要な費用を請求することができます。
養育費の支払い義務
養育費の支払い義務は、子どもが最低限のレベルの生活ができるための扶養義務ではなく、それ以上の内容を含む「生活保持義務」に基づくものとされています。
生活保持義務とは、養育費を支払う本人の生活水準と同程度の生活を子どもにも保持させる義務です。
そのため、非監護親は自分の生活水準と同程度の生活を子どもが送れるように養育費を支払っていく必要があります。
このような義務の性質から生活が苦しいからという理由で養育費の支払い義務は免れられません。
自分の生活水準を落としてでも支払わなければならないのが養育費です。
養育費を請求できる期間
養育費が請求できるのは、原則として子どもが20歳になるまでです。
一般的には子どもが20歳で成人になったら社会的に自立したと考えられ、養育費の支払い義務はなくなります。
ただし、大学の進学などで22歳まで養育費を支払ってもらいたい場合、互いに合意があれば支払い期間を延ばすことはできます。
養育費の取り決め方法
養育費の取り決め方法は、まずは夫婦で話し合い、合意が得られなければ家庭裁判所で調停、もしくは裁判という流れが一般的です。
大まかな流れは以下の通りです。
話し合いで決める
養育費については、まずは夫婦で話し合うのが一般的です。
親権者を決めるのと同時に、養育費の金額・支払時期・支払期間・支払方法・臨時の費用など細かい点まで取り決めをする必要があります。
特に、子どもには学校の入学金や怪我・病気の治療費など臨時の費用が必要になることがあるので、その場合はどうするのか話し合っておくことが必要です。
養育費について、話し合いがまとまった場合は必ず執行文付きの公正証書として残しておくことが重要です。
公正証書にしておけば、万が一支払いがされなかった場合でも強制執行で未払い分の養育費を差し押さえることができます。
養育費請求調停を申し立てる
話し合いがまとまらない場合や相手が話し合いに応じない場合は家庭裁判所で調停、もしくは審判で決めることになります。
また、離婚届を出してからでも養育費請求の調停を申し立てることが可能です。
調停で話し合いをしても合意が得られなかった場合は、これまでの話し合いを踏まえたうえで裁判所が養育費の金額などについて決定します。
家庭裁判所の調停や審判で養育費が決まれば、もし不払いが起きても公正証書と同様に強制執行で差し押さえることができます。
養育費の強制執行に必要な3つのこと
養育費を支払ってもらえない場合、強制執行によって財産を差し押さえることができます。
強制執行とは相手の給料や預貯金を差し押さえて、そこから未払いの分のお金を受け取ることができる手続きです。
しかし、裁判所の強制執行を認めてもらうには、以下の条件が必要です。
債務名義
給料や預貯金などの財産を差し押さえる強制執行の手続きをするには「債務名義」の正本が必要となります。
債務名義とは、法的に確定した請求権・債権者・債務者・債務の範囲などを公的に証明する文書のことをいいます。
執行文が必要な債務名義については「この債務名義により、強制執行することができる」などと書かれた執行文が付いているか確認する必要があります。
なお、債務名義正本の発行や執行文の付与は債務名義を作成したところ(裁判所や公証人役場)で行います。
債務名義となり得るのは、以下のようなものがあります。
公正証書
公正証書とは、養育費について取り決めした内容を公正人役場で作成した書類です。
公正証書の場合、強制執行ができることを記載した「執行認諾文言付き公正証書」であることが必要です。
調停調書
調停証書は、家庭裁判所で養育費についての調停が成立した際に作成される書類です。
審判書
審判書は、調停で話し合いがまとまらなかった場合、家庭裁判所が審判で養育費について決定した事項をもとに作成される書類です。
判決書
判決書は、離婚裁判で養育費の支払いについて認められた場合、それをもとに作成される書類です。
和解調書
和解調書は、離婚裁判で和解が成立した際に作成される書類です。
相手の居場所を特定する
強制執行で財産の差し押さえをする場合、相手の現住所、もしくは実際に住んでいるところを確認する必要があります。
理由として、裁判所からの差押命令が相手に送達されないと養育費を差し押さえることが認められないからです。
裁判所が相手の現住所を調査してくれることはありませんので、自分で調べる必要があります。
相手の現住所が不明な場合、住民票や戸籍の附表などから調べることが可能です。
相手の財産を把握する
強制執行で財産を差し押さえるには、相手の財産を把握しておかなければなりません。
もし、元配偶者の財産状況がまったくわからない場合は、裁判所を通じて役所や金融機関に元配偶者の給与支払者情報や預金口座情報の開示請求をすることができます。
強制執行の手順と流れ
養育費の強制執行を申し立てる方法と、差し押さえによって養育費を支払ってもらうまでの手順は以下の流れとなっています。
申し立てに必要な書類を揃える
強制執行を申し立てるには、以下の書類が必要となります。
債務名義
債務名義とは前述で記載したように、債務者に対して債権があることを証明する書類です。
また、公正証書・判決書・和解調書などは執行文が付いていなければ強制執行をすることができません。
送達証明書
送達証明書とは、相手に債務名義が送達されていることを証明する書類で、債務名義を作成したところで発行されます。
資格証明書
相手の勤務先(第三債務者)が記載された商業登記事項証明書、または代表者事項証明書が必要で法務局で取得することができます。
住民票
債務名義に記載されている住所と現住所が異なる場合や、氏名が異なる場合に必要となります。
請求債権目録
請求する債権の内容について記載する書類です。養育費を請求する権利の内容について記載します。
裁判所のホームページからテンプレートをダウンロードすることができます。
差押債権目録
差し押さえをする債権の内容について記載する書類です。
給料を差し押さえる場合、勤務先や給料の金額について記載し、預貯金を差し押さえには銀行口座について記載します。
こちらも裁判所のホームページからテンプレートをダウンロードすることができます。
当事者目録
債権者や債務者の住所などを記載する書面です。
こちらも裁判所のホームページからテンプレートをダウンロードすることができます。
申立書の作成・提出
債務名義などの必要書類がそろったら「債権差押命令申立書」を作成して裁判所に提出し、申し立てを行います。
申立書を提出するのは元配偶者の居住地を管轄する地方裁判所に申し立てることになります。
なお、強制執行の申し立てをするのに債務名義が1通の場合は収入印紙代4000円が手数料としてかかります。
裁判所から差押命令
提出した書類に不備がなければ、裁判所から「債権差押命令正本」が申立人や第三債務者(勤務先や銀行)に発送され、その後、債務者(元配偶者)に発送されます。
申立人や第三債務者への送達が完了すると、裁判所から申立人に「送達通知書」が発送されるので差押命令正本と保管しておく必要があります。
第三債務者から取り立てる
債務者への送達日から1週間が経過すると、第三債務者から未払いの養育費の取り立てをすることができます。
第三債務者への取り立てについて、裁判所は介入してくれないので申立人自身で取り立てなければなりません。
したがって、差し押さえ先となる相手の勤務先や銀行などに申立人から電話や内容証明を送付して直接連絡を取る必要があります。
なお、強制執行の申し立てから債権を回収するまでの期間は、順調にいけば2週間ほどで取り立てることができます。
裁判所に報告
未払いの養育費が全額取り立てることができたら「取立完了届」を裁判所に提出します。もし、一部しか取り立てることができなければ「取立届」を提出します。
未払いの分を全額取り立てるまでは今回の強制執行の手続きは完了しませんので、支払いがある度に取立届は提出する必要があります。
また、全額回収することができずに取り立てを終了する場合には「取下書」を提出すれば強制執行の手続きは終了します。
なお、2年間取立届が提出されない場合も差押命令が自動的に取下げられるので注意が必要です。
法改正によって第三者からの情報取得手続ができるようになった
第三者からの情報取得手続とは市区町村役場や銀行、年金事務局などの機関へ裁判所から相手の情報照会を行い、相手の財産や勤務先に関する情報を取得する制度です。
養育費が滞納されたとき、今まではご自身で相手の財産や勤務先を特定しなければなりませんでしたが、第三者からの情報取得手続を利用することによって差し押さえができる可能性が高くなりました。
第三者からの情報取得手続で、以下の財産情報を調べることができます。
給与
元配偶者が会社員の場合、給与を差し押さえるには勤務先の特定が必要ですが市町村や年金事務所から勤務先情報を取得することができます。
養育費は子どもが成人になるまで支払いが続きますので、給与を差し押さえることができれば相手が会社を辞めない限り、毎月確実に支払いを受けることができます。
預貯金
元配偶者が取引している金融機関名がわかれば、その取扱店舗・預貯金種別・口座番号・残高情報を金融機関から取得する事ができます。
不動産
元配偶者が不動産を所有しているか不明な場合、法務局に照会して日本全国を対象に元配偶者名義の登記情報を入手することができます。
有価証券
元配偶者が上場株式や投資信託などの金融資産を保有している場合、証券会社に照会してこれらの財産情報を入手することができます。
差し押さえるなら給料か預貯金
強制執行で未払いの養育費を回収するには、給料や預貯金の差し押さえが効果的です。
預貯金は銀行口座から引き出されしまう可能性がありますが、給与は相手の勤務先から直接受け取ることができます。
給料を差し押さえる
給料を差し押さえた場合、元配偶者に給料が支払われる前に勤務先から未払いの養育費を直接受け取ることができます。
ただし、給料の全額を差し押さえることはできず、原則として税金などを控除した手取り金額の1/2まで差し押さえることしかできません。
メリットとして、給与は一度差し押さえてしまえば未払いの養育費を回収し終えるまで、元配偶者の給料から毎月支払われます。
銀行口座の預貯金を差し押さえる
銀行口座の預貯金を差し押さえる場合、給料と違って差し押さえる金額に上限がないので預金残高があれば未払いの分をすべて差し押さえることができます。
ただし、口座からお金を引き出されてしまい預金がない場合は、あらたに強制執行の申し立てをしなければなりません。
また、預貯金の差し押さえは一回きりですので、別の口座を差し押さえるには再び申し立てをする必要があります。
養育費の請求権にも時効はある
養育費の取り決めをしていれば支払いが滞っている場合、過去に遡って養育費を請求することができます。
しかし、未払いの養育費を過去に遡ってどこまで請求できるかは取り決め方法によって異なります。
話し合いや公正証書にまとめた場合でも養育費の請求権は5年で時効が成立してしまいます。
したがって、話し合いや公正証書で取り決めした場合、相手から時効を主張されれば5年分しか遡って請求することができません。
また、家庭裁判所の調停や審判によって養育費を取り決めた場合、養育費の請求権の消滅時効は10年となります。
この場合も同様に10年が経過すると順番に養育費の請求権が消滅していきます。
まとめ
強制執行は未払いの養育費を回収するのに有効な手段です。
しかし、必要な書類や相手の財産の調査など強制執行の手続きをするのに時間や労力がかかります。
また、養育費を払いたくないために職場を変えて転居届を出さずに住所を変えてしまうケースがあります。
元配偶者の居所がわからなければ、強制執行で未払いの養育費を差し押さえることができません。
養育費を払わない元配偶者の居所がわからずお困りの方はご相談ください。